IMAXのような大劇場で観なければいけないものを家のPCで観てしまった後悔が凄い。
しかし、それでも伝わる臨場感。素晴らしい撮影と美術。演技のタイミングと感情の高まり具合の一致が良い。
1カットで繋いだような映像空間は一見ゲームのようであるが、生身の人間が演じることによるダイナミズムが迫ってくる。
これは演劇出身のサム・メンデス監督だからこそ出来る「映像✕演劇」の理論の究極系なのだろう。映像を切らない、つまり呼吸を止めない、ということで世界を持続させる。非常に有機的な世界観の構築に成功している。デジタル化してしまった映画がフィルム並みに有機的になるには、こういう手法が有効なことを証明している。
こうした臨場感は「プライベート・ライアン」から進化して本作で1つの到達点を迎えたような気がする。戦場を体感するには、こうした表現の模索が必要だと戦争映画の傑作達は主張してるようだ。ちなみに「サウルの息子」と「ジョニーは戦場に行った」は戦場ではないが史上最悪の戦争体験を出来る名作で、表現方法が効果を発揮しすぎてて完璧なトラウマになる。
この作品は、そうしたトラウマは与えない。自分にとっては異常な状況を体感し、その中で生きていることを実感する作品。
最後に主人公の名前がはっきり言われる場面がある。最初は名前紹介が雑にされ、覚えることができないまま物語に突入した。
そして誰でもない誰かに我々は感情移入し、最後に名前を言われ何者かになる。
まさしく、違う誰かになるという異次元体験を完璧に計算した演出。
IMAXで観たかった…