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オフィサー・アンド・スパイのayellowbirdのレビュー・感想・評価

3.8
ロマン・ポランスキー監督が19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件“ドレフュス事件”を映画化した歴史サスペンス。作家ロバート・ハリスの同名小説を原作に、権力に立ち向かった男の不屈の闘いと逆転劇を壮大なスケールで描き、2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。
1894年、ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュスが、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷されてしまう。ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく…。

19世紀後半に欧州で高まった反ユダヤ主義の根深さを実感する作品。機密情報漏洩事件の犯人とされたドレフュス。ユダヤ系将校のため初めから疑われ、悪意ある軍の取り巻きが証拠を捏造、犯人に仕立て上げられる。軍の対敵情報活動を統括するピカール。彼は、ドレフュスが無実である証拠を発見し上官に報告するが、逆に左遷。それでも正義を貫き通し、最終的にドレフュスの無罪を勝ち取る。もっとも、彼は社会正義と秩序を守るために行動したのであり、ユダヤ人に対する社会の偏見を正そうとしたわけではない。
ドレフュスとピカール、ともに闘った二人だが、闘った目的はそのルーツを反映して、微妙に異なっていたのだと思う。
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