Chico

ベイビーティースのChicoのレビュー・感想・評価

ベイビーティース(2019年製作の映画)
4.3
末期の病を患う16歳の少女ミアはある日電車のホームで不良青年モーゼスと出会う。ミアは”普通”とは違う自分と”普通”に接してくれるモーゼスに特別な感情を抱く。そして空虚だった心は初めての恋に満たされていき、治療とバイオリンだけの単調な生活に光が差し、輝き始める。

ミアとモーゼス、そして問題は抱えてるけど深い愛情で二人を見守る両親。それぞれの想いを交えて、彼らが過ごした日々を描いたモーメントラブストーリー。

ストーリーはよくある話かもしれないですが、章仕立てに進む無駄を排除した構成、MVっぽい光や色の使い方、音楽の挿入の仕方、臨場感のある手ぶれ画面など、全体的に今っぽい(A24とかそうゆう)感じです。

音楽がめちゃくちゃいいです。ファッションも可愛い(配信のトークセッションでモーゼスがショーツを履いているのはなぜか、という視聴者の質問に監督も主演のトビー・ウォレスも爆笑。クールじゃん、と茶化しながら、宿無し生活で持ち物が少ないので友達に借りたか古着屋で買ったからだと言っていました、あとオーストラリアの夏は暑いから☀️)

ストーリーテリングや見せ方はもともと演劇だったこともあり独特。前述したように章仕立てに進む構成も相まって、一見するとフォトジェニックなシーンの寄せ集めに見える。
そして少し見せ場の強弱(アクセント)が弱くてキーになる要素が捉えにくかったけど、題材に反した明るいトーンとポップな感じが過度に感傷的じゃなくて良かった。

主人公二人の関係性とその描き方が最高。きゃっきゃしてる二人見てるだけで楽しかった。

そしてラブストーリーだけじゃない、家族の物語でもあるというラストはすてき。ある程度湧き上がる感情は予想できたけど胸が苦しくなってやっぱり泣いてしまった。

全体的な雰囲気や空気感がはまりました。

主人公を演じるエリザ・スカレンは(ストーリー・オブ・マイ・ライフで3女のベスを演じた方)本作でオーストラリア最大の映画賞AACTAの最優秀女優賞を受賞していますし、モーゼスを演じたトビー・ウォレスもヴェネツィア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。今後も追いかけたい若手二人✨

ネタバレ↓










ラストのアナの言葉で涙が溢れました。(エシー・デイヴィスの演技がすごい)
日本語字幕だと「お別れもできなかった」ですが、
英語だと「She didn’t say goodbye to me.」(私にさよなら言ってくれなかった)です。
だけどミラは明け方両親の部屋を訪れています。ちゃんとさよならしてるよって言ってあげたくなる。
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