藍住

異端の鳥の藍住のレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.0
こういうタイプの映画は最早映画というよりも記録としか言いようがない。(フィクションだけど)
放浪する先々で迫害され、性的に消費され、働き手としても消費されていく。少年の目から光が消えていき、どんどん感覚が麻痺していく。
人間って弱者をすぐ食い物にして勝手な生き物だな。

2時間50分。
ひたすら暴力に耐え抜く時間だったけど、あまり評価したいとは思えないな。
「どこの国でもこういうことは絶対にある。我々はそれを忘れてはならない。だから映画にした」という作り手の真摯な気持ちは分かるが、ありのままの暴力を映すだけでなく、その先が必要なのでは。
実際に起こっている現実をとことん追求したとしても、そもそもこれは映画だ。
記録じゃない。
もう少し物語の力を信じて欲しかったし、ここまで残虐に描くなら少年がケアされるところまでをセットにして欲しかった。

これは『IT Chapter2』でも思ったけど、「現実ではこれだけ酷いことが起きてる。だからありのまま映した。」と言える時点で自分の持つ特権を行使していることを忘れてはいないか、その映画を観る人の中に当事者が居ることを忘れてはならないしそういう人達が観て苦しんで終わるだけでは駄目だと思う。
だからこの映画もあの結末だけでは正直足りないと思う。
当事者じゃない私がこんなに重い気持ちで帰宅するのだから、当事者はもっと辛い思いをして帰宅しているのだろう。
作り手はそれを忘れてはならない。
悲惨な暴力と、それを浄化するレベルの救いはセットだろ。
もう2020年だよ。
藍住

藍住