Marie

異端の鳥のMarieのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.6
観て良かったし、観るべき作品だったことは間違いないけれど、あまりに苦しかった。人の多面性の中からあらわれる救いなど目の前で簡単に破壊されていく。美しい映像で語られたとて、終わりに希望が見えたとて、埋め合わせになるべくもない人間の醜悪さ。目を背けず真っ直ぐに捉え、否が応でも直視させてくれる。行く先々で死と生を見詰める少年の透徹とした眼差し、同じものには他の作品でも出会った事はあるが、それが次第に自らに向けられたと同じ醜いものへと変容していく様を凝視する勇気がこの映画にはある。
エンドロールに入って、最後まで観ることができた自分に安堵すると同時に、これ以上見なくて済むことにも安堵した。けれど少年にとってはこれで終わりではない。これから先、この記憶と共に生きる長い長い時間が彼を待っている。
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