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異端の鳥のさのネタバレレビュー・内容・結末

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

強烈。観たあと、魂が自分の身体を離れてどこか遠くを彷徨っているような感覚になった。

疎開先の叔母の死をきっかけに少年はひとり放浪の旅に。流れ着く先どのコミュニティにも受け入れられず、出会う大人たちは8割悪意・2割善意な構成。少年が直面する暴力はやがて戦争というより大きな文脈へ収束していく。それでも彼の眼は無垢さを忘れず…なんて聖人伝みたいなことはなく、しっかり擦れててそれなりに悪い事もする。子供は自分の経験してきたことをしっかり吸収してる。
そんなわけで念願の父との再会もやさぐれていたけれど、バスに揺られ眠る彼の腕に彫られた番号を見て、彼にも彼なりの道程があったのだと悟る。ここで悟れるのが偉いというか救いというか、他人の物語を想像できる共感性こそが人間性そのものなのではと思った。少年は自分の名前を取り戻し、帰るべき場所へと帰っていく。

モノクロの画面で煌めく炎が印象的。
「神々のたそがれ」を思い出すルックで、暴力シーンは正直モノクロじゃなかったら耐えられなかったかも。
インタースラーヴィクという半人工言語の響きが不思議。
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