足拭き猫

異端の鳥の足拭き猫のレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.8
東欧ユダヤ人と思われる黒い瞳と浅黒い肌の少年。外見だけで、異端で不吉を呼ぶ者とされてしまう。行く先々で保護されるがそれは労働力、あるいは性的趣向の慰めとしてであって一人の人格としては扱われない。少年も生き延びるためにはその状況を受け入れざるを得ず、感情も無である。

数々の動物が殺されるが、殺す側も人間を人間たらしめる理性を持っておらず、その動物たちといったい何が違うんだろうかと思った。少年がそちら側に加担していくシーンで目つきが変わり、喜ぶべきでない成長をみた。

また、黒魔術、キリスト教、共産主義と主義主張の違う人たちに影響されて何者にもなれて、であればユダヤ人である意味は何なのか。

父親の腕の刻印を見て自分の名前を思い出すところが鮮やか。初めて人間というものになれた。これから訪れるであろう過酷な運命に抗うように。

視界の端から端までぴったりと入るシネマスコープの画角がすごく好き。マゼンタがかったモノクロも美しく、「ROMA」をまた映画館で観たいと思った。