Chico

異端の鳥のChicoのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
3.8
イエールジ・コジンスキーの同名小説の映画化。英題はThe Painted bird

第二次世界大戦中、疎開のため両親と離れ叔母の家に預けられた少年。ある日叔母が亡くなり少年はその土地を離れる。両親のもとに向かっているのか、ただ流れるままに彷徨い続け、旅の途中、土地土地で差別や虐待、様々な暴力を受ける。次々と起こる残酷な光景を目にした少年はいつしか言葉を失う。

寓話と史実が混ざり合ったような独特の世界観があり、戦争とは人間とは、生や死を巡ってさまざまな切り口で語れる映画だと思います。
‘言語’は人間を人間たらしめる最大のもの。言葉を失くした少年が象徴するのは人間性を失くしたヒトの姿。そして迫害され、アイデンティティを失ったヒト(所属する場所を失った者、名前のないもの)の脆さを、戦争の直接的な描写ではなく、少年と動物という無防備で無抵抗な弱者を対象とし、より残酷にそれでいてポエティックに描いています。
希望が覗くラストにはそれまでの耐え難い苦しみがあってこその解放感を感じました。

動物の虐待シーンが多いので苦手な方は心構えを。

以下メモ。
・画はカメラの引きと寄せの多用が印象的。面白い構図も沢山
・何語話してるんだろうと思って観ていましたが、インタースラヴィーク(スラブ諸語を元に作られた人工言語らしい)が使用されていた。
・物語の構成(エピソードの語り方がパターン化してくる)がやや単調で中盤少し退屈に感じた。
・既視感のある映像。ベルイマンの第七の封印とかハネケの白いリボンとか、アレクセイ・ゲルマンの神々の黄昏とか。
・主人公の男の子の感情が初めから割と平坦なので変化が分かりづらい。
Chico

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