クラゲ男爵

異端の鳥のクラゲ男爵のレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.5
『異端の鳥』(2019)

東欧のどこか。

ある事情で身寄りを失った少年が、たった一人であてもなく森をさまよい、文化や人種、村の風習が違う様々な人々に出会い、そのせいでひどい目に遭う地獄巡りロードムービーです。
ひどい目というのは、使い捨ての道具として扱われたり、あるいは性的な暴力を含んでいたりと、少年の目線で見ると色んな方向からエグめの表現なので、観る人を選ぶ映画だと思います。

そういう意味では閲覧注意ですが、よく見れば、ただ露悪的な残虐なシーンを見せたい訳ではなく、何か(その多くは少年の絶望なのですがw)を伝えたいことに必要なシーンだから撮られていることが分かるし、ちゃんとぼかさずに撮っていることで、観た人の中で確実に何かが残る。そんな169分間でした。

少年は行く先々で暴力の嵐に巻き込まれる訳ですが、それに馴染んだ時(=異端、よそものではなくなった時)に、本当に必要だった大事なものを失いかけてしまいます。監督にとって異端(原題は『The Painted Bird』)とは、よそ者、弱者、孤独の象徴であると共に、純粋性の意味合いも強いんじゃないかなと思うんですよね。

きっと作者(原作者&監督)にとって生きる事はとても苦痛なことで、その苦痛は死ぬまで続くんじゃないかと思うのですよね。彼が"異端"であり続ける限り。
(ちなみに原作者であるポーランド人のジャージ・コジンスキーさんは57歳で亡くなっています。ビニール袋を頭からかぶっての窒息死でした)

そこに私はとても同意するし、共感するのです。

https://youtu.be/_8ga9YvFfSA
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