クミンシード

異端の鳥のクミンシードのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.0
ホロコーストから逃れて田舎の叔母に預けられた少年が、祖母の急死と火事によって様々な人の手を転々としていく物語。

全編白黒。会話が極めて少ない。
戦争を、軍や政治家の目線ではなく、民間の子どもの視点から描いた作品は珍しく感じたし、3時間弱の長編でも集中力途切れることがなかった。

拒絶、暴力、搾取。ずっとかわいそう。
戦時中という背景からか、少年が出会う人々はみんなネジが外れたようなおかしな人ばかり。

ひどい扱いを受け続け、最初は動物に優しく接していた少年が、他人にも攻撃的になっていく。中盤以降はほぼ喋らない。
敵意に触れ続けたら、身を守るために当然そうなるよなぁ。


以下、ネタバレあり












・地面に埋められてカラスにつつかれるの、怖すぎる
・邦題にもなっている、鳥にペンキ塗って放ち、仲間の鳥から攻撃を受ける姿を笑顔で見てる男の穏やかな狂気
・首吊った男を最初助けようと持ち上げるも、無理だとわかったら足につかまって体重かけて早く楽にしてあげようとする少年、どんな気持ちだったか
・レイプ男が犬の上に吊るしてたのはほんとひどかった。ネズミに食われて然るべき
・助けた馬がすぐ殺されるシーンには驚いた
・性欲女と性交できず(おそらく勃たなかったか大きさ足りなかった)、その後女がヤギと腰振ってる姿見せつけてきた後の少年の憤り。尊厳を傷つけられた怒りや攻撃性の開花。
・村を蹂躙したソ連兵が優しく接してくれ、軍服と銃をくれる非対称性
・父親と再開できても全く心を開かず、でも名前忘れたのかと言われた答えとしてバスの窓に名前書いて伝える少年。ひどい目に遭わされた憤りと、家族との再会との葛藤か。