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異端の鳥のYHのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.3
賛否両論あるみたいだけど、個人的には凄く刺さる部類の作品だった。

ただ、訳者がなんの目的を持ってタイトルを「異端」の鳥にしたのかその経緯については是非聞きたい。
いつも事前情報無しに映画館に行くタイプの、僕みたいな人間に置いてタイトルとはその作品の初印象そのものだ。勿論先入観は良くないが、どうしてもタイトルに沿った感想になりがちなのは仕方がないこと。
なので映画が始まり、タイトルが出た時は正直少し戸惑ってしまった。paintedという英単語に自分が知らなかった、「異端」という意味があったのかな?それとも凄く宗教的な映画なのか?と。

実際に最初のチャップターには宗教的なシンボルが多々出てくる。然もそれぞれ対比を為しながら。
一例にオルガというシャーマンのくだりがそうだ。最初からロシア正教会のシンボルが出てきて、そのあとは悪魔の子だなんだと主人公を罵り、まるで本物の悪魔を見たかのように十字を切る。(余談だが、ロシア正教会の十字の切り方はカトリックのは違うんだな…と思った。)
しかしそんな主人公を連れて行ったのはキリスト教とは程遠いシャーマンのオルガ。なんてアイロニーなんだ。「タイトルを変えたのはこんな理由だったのか」と一瞬納得してしまった…が、そこからのストーリーは宗教とは全く関係のない話だった。
原題を生かして「色塗られた鳥」とかにした方が何百倍はマシだったのではないかな。

文句はこのくらいにして、映画自体はすごく良くできた映画だった。
戦争の悲惨さを描く映画ならよく感想的に走りがちだが、この映画は始終淡々と、ある意味冷たいほど感情を排除して主人公の旅(?)を追う。
言わせてもらうと戦争バージョンの星の王子さま…と言えるだろう。

期待作が多かったためか地雷も多かった今年の9月と10月に鑑賞した映画のうち最も満足度の高い作品だった。
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