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みをつくし料理帖のmatchypotterのレビュー・感想・評価

みをつくし料理帖(2020年製作の映画)
3.6
《料理の映画》、Vol.12。
意外と次から次へと出てくる《料理の映画》。もう少し行くぜ。

このジャンルはやはり、、、日本勢。四季折々の自然豊かな恵みが際立つ日の本、日本。
時代が変わっても、変わらぬ季節と豊かな自然に囲まれた風土が織り成すきめ細かで繊細な料理の道。

藤井隆、面白過ぎる。ほぼほぼ1人でこの映画のバラエティ担当を一手に担う。
彼がいなければシリアスな女料理人の地べたを這いつくばりながらも上を見ていくような厳しい話に染まるところ。

結構色々絶望的で苦労が絶えない出来事に耐えながら、自分の腕を磨き、料理で人と自分と向き合う女料理人。

いきなり冒頭から幼い彼女に襲い掛かる災難。
“雲外蒼天”。
これからの人生、絶えない苦労があるが、それを乗り越えれば彼女にしか見えない綺麗な空がみえる。

そう占われた彼女にその言葉通りに降りかかる災難の数々。
大水で家族を失い、家を失い、拾われて西から東にやってくる。

西と東の味の違いの壁にぶち当たり、試行錯誤の絶えない日々。
鰹と昆布の合わせ出汁を考案し、しがない飯屋で一縷の光明を掴むも、地場の大御所の料亭との鍔迫り合いと邪魔が入り、またまた災難が降りかかる。

何かチャンスを掴めば、突き落とされる。
何度も絶望を見ている間に、大水で生き別れになった無二の親友の影が。

遊郭吉原で幻の花魁になっていた彼女と会うことは叶わないが、お互いにその存在が近くにいることを感じる喜びを噛み締めながら、彼女の苦楽を料理で支える。

“食は人の天なり”。
人が口に入れる物が人を形作る。

この時代で生きる女性の辛さと大変さが儚く描かれる中、それに決してめげずに諦めずに強く生きていく様子がとても美しい。

石坂浩二、藤井隆、窪塚洋介、中村獅童、反町隆史、、、その他、多くの豪華キャストが、このか細く儚い女料理人の物語に、太く強い輪郭を付けていく。

別の映画ではなかなか気迫とエッヂの効いた役をこなす彼らが、ここでは静けさの中から強さや優しさをもたらす感じが、とても良い。
たまにはこういうのも良い。

皆が皆、それぞれ必死に生きている。生きれる場所で、やれることを精一杯やっている。
だからこそうまくいかないこともあれば、妬みや嫉みも生まれるし、絶望するから希望もある。

そんな人々に料理をもてなし、自分と周りに生きる道の活路を少しだけ見い出す。

苦難を乗り越えた先に、、、また苦難。
「真っ直ぐ進め。下がるなよ、下がり眉」。

強く生きる彼女が手繰り寄せ、皆が支えて一緒に前を向く、、、蒼天を夢見て。

あの“牡蠣の宝船”は食べたい。

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TSUTAYA DISCAS運営の映画コミュニティサイト「Discover us」にて同アカウント名でコラムニストをさせて頂くことになりました。
https://community.discas.net/announcements/ib1wyncr43idknqm
別視点で色々映画について書いていこうと思います!ご興味ある方は是非お待ちしております!
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