たく

一人っ子の国のたくのレビュー・感想・評価

一人っ子の国(2019年製作の映画)
3.8
1979年から35年間続いた中国の一人っ子政策について、一人の女性が息子を産んで母となったことをきっかけに当時を知る人々を取材して回るドキュメンタリー。
なんとも恐ろしい話で、この政策がつい数年前まで続いてたってのが凄いね。

二人目が産まれたら屋根を壊されるって話に始まり、女に産まれた赤ちゃんが捨てられるとか、強制的な不妊・堕胎手術を受けさせられるなどの実態がだんだん浮き彫りになって行く。5〜6万人の不妊・堕胎手術をした助産婦の話が凄くて、それらのことを当時の人々が国の政策として仕方ないと受け入れてるのがなんとも虚しい。
タイトルバックの赤ちゃんが羊水に浮かんでいるように見えるのが、実は捨てられた胎児のホルマリン漬けと分かる芸術家のくだりがゾッとした。ゴミ捨て場に遺棄された数々の胎児の写真が衝撃的。
後半は養子縁組制度を隠れ蓑とした大規模な人身売買の実態にまで話が展開し、国ぐるみの制度の欺瞞を暴いていく。

大きなテーマをたった一人の女性がカメラを持って自分の足で取材するところにリアリティがあって、鏡にカメラが写り込むのも気にしない大らかさが良かった。
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