EDDIE

HOKUSAIのEDDIEのレビュー・感想・評価

HOKUSAI(2020年製作の映画)
3.1
稀代の絵師・葛飾北斎を柳楽優弥&田中泯のW主演で描く。
喜多川歌麿、東洲斎写楽など錚々たる顔ぶれから見出され、世に解き放たれた北斎の偉大なる道は伝わった。
ただ4章構成で描くにはエピソードが浅く北斎の絵のように迸る熱量は感じない。役者は良い。

「富嶽三十六景」をはじめとした名画を多数残しており、作品の数は生涯で三万点以上と言われる葛飾北斎。
彼の絵を除き、パーソナルな部分は全く知らないこともあり、本作はとても楽しみにしていました。

あくまで自論ですが、歴史物・伝記物は決して丁寧に事実を描く必要はないということ。もちろん全ての資料が残っているとも思わないので、もしかしたらこうだったんじゃないかとか想像を巡らせながらその歴史や人物に興味を沸かせられればいいと思っています。
つまりは事実無根な嘘をつかなければ、面白ければ良いと思っています。

前半はどういう人生を送ってきたんだろうって好奇心が勝つことと、ストーリーテラーとして阿部寛演じる蔦屋重三郎が作品を引っ張ってくれたのでとても楽しめました。

ただそれ以降がイマイチだったんですよね。
それこそ特に有名な名画「富嶽三十六景」が完成した経緯も「ああそうですか…」ってぐらいアッサリしてるし、全体的に薄い、というか浅いんですよね。

蔦屋重三郎に見出され出世を果たす青年期と齢90歳の晩年期の2つの時期を4章構成にしているのですが、実際その間って物凄く重要じゃないですか。
そこがすっかりと抜け落ちていて、特に後半の田中泯パートはイマイチ感情が乗り切れないんですよ。

どうせこのような構成にするのであれば、どちらか(個人的には青年期)の比重を重くして、片方をもっと濃厚に描いていただいた方が映画として面白くなるんじゃないかなぁと思ってしまいました。

なので残念だったのは大半が脚本なんですけど、演出もちょっと気になる部分が多くて…特に老年期パートの風吹き荒れるシーンと斬殺シーン(観た方ならこれで伝わるかな)がめちゃくちゃダサいんですよ。
演出の狙いはいいんですけど、肝心の見せ方がダサすぎて逆効果。あそこもっと演出上手い人だったら、逆に本作のハイライトとも呼べる効果的なシーンになってたと思うんです。
大事なシーンだからこそ残念でしたね。

とはいえ俳優陣の演技はとても良かった!
主役の柳楽優弥は素晴らしかったし、前述の阿部寛は物語を引っ張ってくれました。
後半は確実に永山瑛太が牽引してくれてましたよね。
田中泯は演技はいいんですが、作品のテンポを一気にスローモーションにしてしまってる感じが見受けられて、監督も演出の仕方に遠慮が出てしまったのではとも感じてしまいました。
間を上手く使ってるとかではなく、単純にセリフの喋り出しが遅すぎてもどかしいんですよ。正直ストレスでした。

前半部分で開花前の孤立した柳楽優弥演じる勝川春朗(北斎改名前)とか最高に良かったんですよ。
だからこそ後半の失速を感じてしまったんですよね。

ただ、喜多川歌麿演じた玉木宏がバチくそエロいです。この人ホント色気半端ないですね。男の私もやられてしまいました。
ここで登場する花魁の麻雪役は近年注目している芋生悠。
個人的には脇役も含め、キャストには大満足でした。

※2021年新作映画68本目
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