ぽち

キル・チームのぽちのレビュー・感想・評価

キル・チーム(2019年製作の映画)
3.5
監督の描きたかったテーマがクッキリと見え、またそれに合った演出をされた質の高い作品。

作られた流れを見てもわかる。
2010年に起きた「メイワンド地区殺人事件」後、今作の主役アンドリューのモデルであるアダム・ウィンフィールドを追跡したドキュメンタリー「キル・チーム」を2013年に発表。

そしてそれを元にフィクション的な要素も入れドラマとして作ったのが今作。なのでリアリティもあり引き込まれるストーリーになっている。

上手いと感心したのが事件を告発した兵士ではなく、最終的に悪に流されてしまった兵士をメインに持ってきているところ。
ドキュメンタリーではその後の法的手続きや父親の努力などを描くために彼を追ったのだろうが、今作では告発をした兵士をメインに持ってくれば、ラストがスッキリのエンターテイメントにできたはず。

しかしあえて同じ罪を犯した者に葛藤させることで、深みを与えている。

ぜいたくを言えば裁判の過程や、実際にはこの事件がスケープゴートだったことへの批判なども入れてほしかった。


余談。
作中でディークス軍曹が人の指を見せて脅迫するが、実際はもっと酷かったようだ。

メイワンド地区殺人事件関係の裁判では一般人三人(実際に裁かれたのは三人分だけってのも酷い)の殺人事件だけではなく、ハシシの使用、捜査の妨害、告発者への暴行などで裁かれている。

そして、体の一部をトロフィーとして集めた罪での起訴もあり、これは調べてみると「指」などという生易しいものではないようだ。
ディークス軍曹だけでなく他の者もやっていたようだが、軍曹は特にひどく、医療用のハサミを持ち歩いていたそうだ。

でも、一番恐ろしいのが、メイワンド地区殺人事件がスケープゴートだということ。
他者への見せしめ。
見せしめがなぜ必要か?

・・・・・そういうことだ。
ぽち

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