塚森

劇場版 SHIROBAKOの塚森のレビュー・感想・評価

劇場版 SHIROBAKO(2020年製作の映画)
3.2
待望の劇場版、満員の劇場で観賞。まさにファンムービーだったと思う。
TVシリーズから4年後、いろいろあってスタッフが散り散りになってしまったムサニを舞台に、オリジナル劇場長編を制作する今作。
かつてのメンバーが続々と復活、いわば胸アツな展開で物語は進むが、ちょっと物足りない。ファンムービーとしてはそれでいいと思うし、飽きずに楽しめた。しかし、アニメをつくる現場として考えるとどうだろうか。
新卒1年目のときと変わらぬメンバーで作品を作れることはある種理想的かもしれないが、正解はそれだけではないはずだ。
4年のうちに育った若手クリエイター、もしくは制作として力をつけた宮森の人脈によって集まったクリエイターたちで作品を作ることこそ、ムサニの成長、宮森の成長につながるのではないだろうか(フィクションとして楽しむべきだろうけれど)。

彼女たちは変わらない。紆余曲折あっても、高校生の頃に抱いた七福神の夢を追い続ける。それ自体は素敵なことだけれども、宮森の理想が常に過去にあることが問題だ。
かつての自分たちを懐かしんでは現実とのギャップに鬱屈とする(美少女の顔をした)大人の姿は見ていてしんどいし、宮森の心の声、ミムジーとロロの芝居もそろそろ寒い。
劇中、中盤まで宮森がプロデューサーであることははっきりと示されないが、そこまでの仕事振りから彼女の役職を判断するのは難しい。それくらい4年前から(高校生の頃から)変わらない宮森なのである。

なぜアニメをつくるのか。その答えを出せないまま宮森は走り続ける。彼女たちが回顧的でなく前向きに、能動的成長からアニメを作れる日が来ることを願う。
塚森

塚森