ギャス

Redのギャスのレビュー・感想・評価

Red(2020年製作の映画)
3.2
人が突き動かされるような愛の感情とは、家の存続やことを荒立てない気遣いのことではない。秘めたる想いや何かおかしいと潜む疑問は、赤いマグマのように、赤信号がずっと点滅するように、助けを求める赤旗のように、そして心の中から流す血のように常に彼女に警告していたのだ。

ネタバレ
塔子にとって、愛を求めるのと安定を求めるのは、なかなか両立しない。母子家庭だったという過去も影響しているのかもしれない。たんなるタイミングかもしれない。エリートサラリーマン?の夫は、自分の性処理を含め、自分の嫌いなものを食べてもらうところにも表れているが、世話係としての嫁を求めている。生育環境的にそれしか妻という形を知らなかったという不幸もあるだろうが決定的に愛の形が違う。
デザインした家を好きだと言ってくれた、必要なときにそこにいてくれた、性愛も対等にあった鞍田は、何よりもお互いを理解し合える存在だった。

一番可哀想なのは娘だった。
最後に子どもを捨てた形になったが、娘をあの家から連れ出すことはおそらく無理である以上、ああやって去るしかなかったろう、むしろ去れと言われたのだろう。
そして、塔子があの家に居続けることにも、家を出ることにも、これからの彼女が幸せになる未来は見えない。この映画はそうやってバランスを取っているようにも見える。


ところで。
生活の安定を結婚に求めなくてもいい社会的立場や収入が女性にもっと開けていたら、
こんな不幸な結婚はもっと減るのでは?と思うべきなのだろう。
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