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マトリックス レザレクションズのogoのレビュー・感想・評価

3.8
伝説のトリロジーから18年。まさかの第4作。

「愛」と「選択」の物語。

個人的には、きちんと『MATRIX』でした。

前3作が偉大過ぎる故か今作は賛否両論入り乱れてるけれど、今の時代に再び『MATRIX』の世界へダイブ出来た感覚だけで及第点。

※ 過去3部作を未鑑賞or未消化のまま今作だけ観ると本当に意味不明なので、きちんと予習してから観ることをオススメします。

人間と機械という単純な二律背反の対立構造から、『Revolutions』のネオとトリニティの選択を経て「愛」というロジックに寄らない領域を学んだMATRIX。人間VS機械ではなく、イデオロギーによる多様で複雑な対立構造へ、より現実に近いリアリティに満ちた世界観になったと言える。

「愛」と「選択」という意味では、過去トリロジーと同じテーマを貫いているし、更に今作の選択はトリニティに委ねられているという点で、ひとつの昇華もある。

一方で、エンドロールに流れる言葉のように、この作品はラナ監督から両親の「愛」への感謝と賛歌であり、逆に言えばそれ以外の要素は蛇足に過ぎないのだろう。

そうした意味で、今作はMATRIX世界を舞台にしつつも、非常に私的な作品になっており、そこが『MATRIX』の様々な要素を期待して足を運んだ観客からすれば「何か違う」という物足りなさを生むのだと思う。

女性キャラクターの活躍とポジション取りの大きさはラナ監督自身の性の転換を大きな下地にしていると思うし、頻繁に挿入されるメタ的シーンは肥大化したMATRIXワールドとそれに群がる興行的思惑のあれこれを皮肉りつつ「私は撮りたいテーマを撮る」という明確な意思表示にも見える。

ただ、根底に流れる本質は同じでも「愛」に全振りした結果、過去トリロジーに膨大に詰め込まれていたMATRIXならではの哲学的世界観は薄れ、アクションや映像面での新規性も無い。メタ的視点も意図は汲めども、どうにも没入感を削ぐ場面もあり、作品として効果的かと言うと疑問は残った(何処かMARVEL的な匂いを感じるポストクレジットからはシリーズ化を求めるワーナーとウォシャウスキー姉妹との対立構造も透けて視える)そして観終わって考えてみると、ストーリー的にはMATRIXに囚われた構図はさして変わらず何も進捗していないので、カタルシスも薄い。これ、ネオとトリニティの子供を主人公にした次回作ありうる気が…。

何はともあれ、トリロジーで完結していた物語のその後と、再びネオとトリニティ及びMATRIXの世界と出逢えたことに感謝。
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