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オッペンハイマーのogoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
公開後すぐに劇場で観たものの、どう感想を書けばいいのか、頭と心が錯綜して、レビュー放置。ようやく書いてみる。

常に時間を題材にするノーマン作品として、今作のテーマは「スライド(摩り替え)」、そして「蛇行する時間軸」のように捉えた。

原爆の映画と思って観に行ったら原爆のシーンが無い、オッペンハイマーの物語かと思えば彼自身も自分の人生をコントロールできていない、ナチスに使うべく開発された原爆が日本へ落とされる、英雄と持ち上げられ裏切り者と断罪される。時間の流れは一定でも、選択肢の可能性は無限大、どの道を辿るかも予測不能。ただ、可能性の中で選択された結果へと歴史は進んでゆく。

当初の目的や意図、それらが種々の要因によって捻じ曲げられ、進むべき方向へ進まず、それでも正しいか間違っているかの判断は脇に置かれ、世界は進む。時間は進む。

時間の経過、人間の思惑、歴史の解釈、ひたすら蛇行し、予想せぬ影響を与えながら、それでも前にしか進まない。修正は不可能だし、蛇行した先の悲劇を直線的に避けるのも不可能だ。
出来ることは、ただ微力でも抗うこと。抗えば、運命の蛇行線は少し緩やかになるかもしれない。抗ったとしても、結果は変わらないかもしれない。ただ、抗うという意思、その意志を多くの人が持つこと、それだけが蛇行する歴史を少しでも良き方向へ導ける可能性なのではないだろうか。

オッペンハイマーは、抗った…?
それとも、抗えなかった…?

オッペンハイマーが原爆開発を拒否したとしても、いつか誰かがそのジョーカーを引いたことは確かだろう。

誰が引くのかは重要ではない。
引こうとしている人がいる時にどうするか、引いてしまった後にどうするか。

我々に求められるのは、いつも未来への視点なのだろう(もちろん過去の教訓を胸に)


ノーマンは今後どういう作品を撮るのだろう。
作家性の強いノーマン作品も観てみたいが、一方で『ダークナイト』『インターステラー』あたりのようなエンタメ作品もまた観てみたいところ。
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