ユーライ

マトリックス レザレクションズのユーライのレビュー・感想・評価

4.5
『シン・マトリックス』あるいは『マトリックスはつらいよ お帰り ネオさん』。作家がほとんどヤケクソな自己言及を経て、物語を定義し直し自分の手に取り戻す。「もう一回始めればいい」というポジティブにやられた。シリーズの欠点を受け継ぎながら、時間を空けてよりオタクの葛藤が反映された見世物的面白さが上回る。その感覚はやはり『シン・エヴァンゲリオン』で、前世紀末に厨二を大量発生させたコンテンツが何の偶然か邦洋揃って同じ年にケリを付けたシンクロに勝手に感動。エンドロール前の絵面まで似てるのはどういうことだ。庵野とウォシャウスキー姉妹の作家性が共通しているのだと思う。オタクの考えることは大して変わらない。1作目においてネオがトリニティーありきの存在だったことは「逆白雪姫」で既に示されていたが、今回はトリニティーが主役であったと明言する。ネオがぶら下がるヒモな情けなさを見ながら、とうとうやってやった作家の主張に感じ入る。「生みの親がぶっちゃけるやりすぎメタフィクション」として一番面白いのがエンドロール後のしょうもないダベり数十秒なのはどうか。台詞を語らせると人物を棒立ちにさせる画面の退屈さは相変わらずで、説明以上の意味がない、加えてどうも要領を得ないからだんだんどうでも良くなってくる。中盤以降のザイオンが悪夢的絵面にも関わらず飽きる。クライマックスの市街地カーチェイスは『怒りのデスロード』をやりたいんだと思うが、それなら『新感染半島』の方がよっぽど良い。ただ上空から人間が落下するゾンビものとしてのスペクタクルは確保。真実の世界ではなく自分を見つけるのが大事なのは十分分かるが、「精神科医が敵」なお話はどう考えても曲解を免れないと思う。そういう危うさは絶対にある。
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