ケタミン

アボカドの固さのケタミンのレビュー・感想・評価

アボカドの固さ(2019年製作の映画)
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「気まずい空気」。それは社会的動物である人類が最も嫌うもののひとつだろう。誰にでも覚えがある普遍的なストレス源であり、ごくありふれた日常生活の構成要素でもあるが、映画やテレビドラマにおいてはストーリー展開の妨げ、余計なものとして回避・排除されるのが通例だ。
ところがこの映画はそれを推進力に変えてみせた。誰もが避けて通りたがる「気まずい時間」を丹念に描くことで人間関係のリアリティに異様な鮮度をもたらし、通常は退屈なありふれた日常描写に奇妙なスリルを与えている。いやそれどころか、役者の絶妙な間合いと計算されたカメラワークによって「気まずさ」をエンターテイメントの座に押し上げてしまった。
映画に限らずあらゆる表現ジャンルにおいて自分が求めていたのは、このような「思いもよらぬ不意打ち感」だった。と、気付かされた。
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