存在の不確かさ、認知。目に見えるもの、さっき食べた晩御飯そうした当たり前と思えるものでさえ個人個人で認識の違いが生じる。猛烈な切り返しの会話は実は会話をしていなかった。一方的な主張が双方から行われているだけだったのだと気づく。この映画では会話をしているふりすらせずに一方的にしゃべっていただけなのに映画の文法として会話が成立していると錯覚させられる。そこに鋭い一撃が待っている驚き。映画の文脈の上で会話していたはずなのに全く相互理解は果たされない。同じ世界を共有することは不可能で共有する努力すらも認められずはしごをはずされる無力感。