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マザーレス・ブルックリンのEDDIEのレビュー・感想・評価

マザーレス・ブルックリン(2019年製作の映画)
4.5
エドワード・ノートン監督・主演・製作・脚本のノワール作品。144分の長尺ながら、ノートンの演技力や謎の深まるミステリー性、そして作品を彩るジャジーな音楽により一切飽きがこなかった。ノワールもの好きには絶対オススメ!

さて、エドワード・ノートンが4つの草鞋で傑作を生み出しましたよ。
前提としてもちろん好みの分かれる作品であることはここでお伝えしておきます。ただノートンが好きな方、古臭いニューヨークの街並みとか好きな方、探偵もの・ノワールもの好きな方にはオススメいたします。

私のノートンとの出会いは『ファイトクラブ』でした。当時の彼のとんでもない猟奇性を孕んだ演技に魅了され、『インクレディブル・ハルク』でこんな役もこなすのねと思い(その後のMCU作品との決別については忘れましょう)、『バードマン〜』で完全に心を打ち砕かれました。
つまりは彼の演技が好きなんですよね、私。そんなこと言いながら、さほど彼の出演作を網羅できてないのが申し訳ない。

そして、本作では主人公の私立探偵ライオネル・エスログを演じますが、彼はトゥレット症候群という障害を抱えているという難しい役どころでした。パンフレットにも書かれていましたが、人によって症状が異なり一貫性がないようです。だからこそ、ノートンも役作りのしがいがあったのでしょう。完全に演技派の彼ならではの役どころでした。
物語としては彼の育ての親のような存在であるフランク・ミナ(ブルース・ウィリス)が連れ去られ殺害されるところから始まります。彼の絡んでいた事件は何なのか、彼を殺害した犯人は誰なのか、事件の真相を追うにつれてニューヨークブルックリンの深い闇、そして裏の大物にまで行きついてしまう。

トゥレット症候群に悩まされるライオネルは、話し中の話題とは裏腹に突如別の思考回路が邪魔するような形で奇声を発したりと毎度苦労させられます。その一方で、驚異的な記憶力や勘、行動力で事件の真相を追い求めていく姿に、鑑賞者側はどんどん引き込まれていきます。
本作の素晴らしさは原作の舞台が1999年であったものを1957年のかつてのニューヨークを舞台に改編した脚色の部分にあります。ノートン自身のニューヨークに対する思い入れと権力者の暴虐のごとし力の使い方など、彼が思い入れのあるニューヨークの抱える闇の部分を多くの人々に知ってもらいたいという想いが伝わってきました。

クライマックスに近づくにつれてBGMが緊張感を高めていく音楽の使い方にも唸らされました。一歩間違えれば物語を邪魔しかねないBGMですが、本作では上手く作用していました。途中変態のようにニヤついてしまった自分がいたことはここだけの秘密です。
細かなキャラクター設定やアイテムが伏線となり、一つ一つ解消されていくのも観ていて気持ちがいい。

ほかにもウィレム・デフォーやアレック・ボールドウィンら名優も手堅く作品を重厚なものに仕上げるのにひと役買っています。
ヒロインのローラ・ローズ役のググ・バサ=ローも存在感があり、それでいて美しく、本作に彩りをもたらしてくれました。
美しいジャズミュージックの演奏とともにライオネルとダンスするシーンは本作のハイライトの一つでしょう。

大きな権力に立ち向かう、そんな探偵ものには欠かせない要素が見応えある形で作り上げられていました。
エドワード・ノートンがやりたいことをやり切ったぐらいに、無駄に長く見せるシーンなどあり、スローテンポな展開も重厚な本作においては全くノイズとはならず最後まで楽しめました。ノートンの代表作にまた一つ傑作が加わったと感じた次第です。

※2020年劇場鑑賞6本目
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