ぷりん

街の上でのぷりんのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.8
何人もの友達から勧められて鑑賞。映画好きの友達が「今年1番、人生で1番、今泉監督作品で1番」と言っていたので期待値が高かった。

前半は、本当にこれが今泉作品で1番なのかと思いつつ懐疑的に見ていたが、後半になるにつれ、友達の意見に納得した。この映画は素晴らしい。満員電車の中で吊り革に捕まりながらスマホの小さな画面で見た自分はなんて勿体無いことをしたんだ。絶対に劇場で、大きなスクリーンで見るべきだった。

なんといっても出会ったその日にイハの家で喋るシーン。恋人になるのか、友達になるのか、はたまた一夜の関係になるのか。色々な想像が出来るシーンだった。多分15分以上カットがなくて超長回しだったことにも感動。
中田青渚さんの演技、ナチュラルな関西弁がかわいすぎる。この女優さん、初めて知ったけど一気にファンになりました。

雪ちゃんと青が最後にケーキを食べるシーンで、青が関西弁になってた気がする。これはイハちゃんに影響を受けたってことなのかな。イハちゃんはなんで青を部屋に呼んだんだろう。答えがなかったからこそ色々想像できるな。
ただイハにとっては、古着屋で読書する青を見たあのシーンがゴールだったのかもね。

全てが繋がる翌朝のシーンも傑作だった。
あれを見たからこそ下北沢という世界にも足を踏み入れたくなる。あんなに人間関係が実は密で、狭い世界なのだろうか。
みんな真面目で真剣なのに、「店長ずるいって」と怒る青、青を彼氏と勘違いするイハの元カレ、青に想いが伝えられないから自転車を奪って逃げたのに坂が上がれない雪。みんな真剣なのに的外れだから、ますます面白い。


加えて、冒頭のコントのような謎カップル、劇場でタバコをくれたお姉さん、ラーメン屋で出会った風俗嬢。
前半を見る限り、この辺がキーポイントな役なのかと思いきや、その後は全く回収されない。それどころか、かわなべさんの死の理由、五叉路さんのその後と関取との関係、警察官の悩み。何もかもが回収されていないからこそ、ある意味で想像力を掻き立てられる。

あと気になったのは、青が久々に取り出すはずのギターをチューニング無しで弾けたこと。本当は練習してたのかな。
冬子の青に対する想いもいろんな撮り方ができたな。
映画監督町子の見え見えなあざとさ。彼女の目的はなんだったんだ。

とにかくこの作品にはカタルシスがない。進んでいるようで何も進んでいない作品。だからこそ良いんだよ。

劇場で見なかったことを本当に後悔させられた作品だった。
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