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アフター・ヤンのMasterYuのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
3.6
茶葉販売店を経営するジェイクと妻カイラは、中国系養女ミカにアジアの文化や歴史などを教えるために、「テクノ」と呼ばれる家庭用ロボットのヤンを招き入れ、穏やかな日々を過ごしていたが、ある日突然ヤンが動かなくなり、兄のように慕っていたミカはふさぎ込む。
ヤンを直す手段を調べるジェイクは、ヤンの体内に1日ごとに数秒間動画を撮影し記録する特殊なパーツが組み込まれていたことを知る。
膨大な数の映像の中には、ヤンがジェイクの家に来る前の記録があり、見知らぬ女性の姿が映っていたのだが・・・。

2020年に劇場で観た「コロンバス」のコゴナダ監督の長編2作目。

「コロンバス」では、固定されたカット、建築物などの背景のこだわりに中毒性を感じたので、本作でもその辺りに期待してましたが、題材がまさかのSFテイスト。

オープニングのダンスシーン、ここの掴みはOKという感じ。
それ以降はゆったりとした流れの中で抽象的且つ哲学的ともいえる演出で、コゴナダ監督の日常を切り取るカットの美しさを感じさせてもらいました。

「ブレードランナー」におけるレプリカントと人間との違いは?という部分は、「エクス・マキナ」などでも扱われ、AIが生活に入ってきている現代では、より取り上げられることが多くなりそうな題材ですが、ロボットの中に残る記録が、人の記憶とリンクし、慎ましやかな幸せを既に手にしていることに気づかされていくストーリーはとてもよくできていますね。

とはいえ、「コロンバス」同様、いやそれ以上に一般ウケはしないのではなかろうか?という感じで、私の前、横に座っていた人たちは船漕いでいましたよ(笑)

「リリイ・シュシュのすべて」のエンディング曲「グライド」がカヴァーされていましたが、余韻に浸るにはいいチョイスだったように思います。
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