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’96のレクのレビュー・感想・評価

’96(2018年製作の映画)
4.8
‪1996年に高校を卒業した同級生が20年ぶりに集い、想い出を回顧しながら初恋の相手とひと晩だけ心を通わす。‬
‪切なくもどかしい哀愁と溢れ出す淡い恋心がロマンティックに描き出され、いつまでも記憶の片隅に残る忘れられないあの人への情念に想いを馳せる。

‬ 主人公ラームの意中の相手ジャーヌ。
いつも姿を追いかけ見つめ照れてマトモに喋れない。
それに気付いて徐々に心惹かれていくジャーヌ。
二人の青春が蘇る。

ラームは『Yamune Aatrile(ヤムナー川で)』が好きで、ジャーヌに歌ってほしいと願います。
これはヒンドゥー教神話を基にした曲で、クリシュナ神(別称カンナン)に恋焦がれる牛飼いの妻ラーダーの心を歌っている。
ラーダーが人妻でありながらクリシュナを思うのはバクティ(帰依信仰)のメタファーである。

『彼は私のすべてだった。』
"if"の未来、実現しない妄想は心の支え。
夢のような二人の時間が過去に失われた時間を空想の中で現実にする。
鑑賞後は物凄い余韻に包まれた。

このように最も評価できる点が、男性視点がいつの間にか女性視点に変わっていること。
前半部の回想、高校時代を経て観客にも懐しさを呼び起こし、そこから転調する今の会話劇が本当に最高すぎて。
知らなかった過去と知っている相手、誰もが通る恋と失恋。
運命の悪戯か、それをたったひと晩で走馬灯のようにかけ巡る。
はあ…好き。
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