Elly

WAVES/ウェイブスのEllyのネタバレレビュー・内容・結末

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

同年のEuphoria S1と合わせてティーンのメンタルヘルスに向き合う作品が完全にA24の代表ジャンルになりましたね 流石...

Euphoriaと同じ撮影スタッフが居るということで、ちらほらEuphoriaでも見たようなシーンがあって楽しかった。長い道を自転車で駆け抜けるエミリーはジュールズと重なるし、極彩色のフラッシュはもうお手の物ですね...

アレクサ・デミーとルーカス・ヘッジズの存在感は流石!
アレクサのgood bitchはぶり素晴らしくていつも好きになっちゃう。
ルーカスは「Ben is back」の時のような不安定な役も、今回のような安定した役も似合うから凄い。二人が本当に好きすぎるので、こちらもA24の「mid90s」を早急に観ようと思った。

そしてEuphoriaと同様に、ティーンに絶大的な人気を持つアーティストが若者のメンタルヘルスに向き合う作品に楽曲を提供する環境が普通にあることは、とても羨ましいし凄い国だなと思う。それだけ問題も多く、根深いものばかりだということも事実だけれど。

タイラーがEuphoriaのルー、ネイト、マッケイの苦しみを全部混ぜたようなキャラクターで、全てが転げ落ちていく様があまりにも急速で乱暴で虚しい。ここでも父親による精神的虐待と学校でのホモソーシャルな環境型苦痛の被害者としての少年が描かれる。舞台は現代なのだろうけど、こうしたスポーツ志向の子供に親が施す教育が一昔前の詰め込み・追い込み型アスリート教育から変わっていない様は毒々しい。精神崩壊の描き方は流石Euphoriaスタッフ。観ている側も気分が落ち込むので元気じゃない時にはあまり観ない方がいい。

だけどタイラーへの同情は正直殆ど無かった。彼の苦しみは事実だが、その八つ当たり的な実害を受けているのは恋人のアレクシスや妹の(お決まりのpoor good little sister)エミリーといった力の無い女性だ。

そういう意味で言うと2時間にまとめるから仕方ないとはいえ、エミリーの理解や立ち直りの早さ、物分かりの良さには違和感を感じたな。あんな短い時間で兄への許しの感情を得られるわけが無いし、それが成り立つとしたら確実に彼女は彼女自身の心をいくらか殺していると思う。タイラーはもちろんエミリーにもちゃんとしたカウンセリングを受けて欲しくなった。

あと、エミリーとルークがパーティーにいるシーンで”X”って聴いた時にとっさにビリー・アイリッシュの”Xanny”を思い出したけど、多分抗不安薬「Xanax」の略語なんだろうな。そしてカジュアルにドラッグを楽しめてしまう環境の恐ろしさが緩い雰囲気(多分本当にこんな感じ)で描かれていることにゾッとする。おそらく薬物規制は銃規制よりもずっとずっと難しいような気がする。
Elly

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