マクガフィン

グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇のマクガフィンのレビュー・感想・評価

3.1
主人公・大泉洋のダメ人間ぶりの生々しさが良い。ダメさの中に、個々に持っている譲れないラインを示しつつ、一定の品をキープすること。誰にも知られたくない黒歴史を現在進行形のように描き、更に、済し崩し的に沈んでいくことで、剥き出しになる人間味が、如何にも原作・太宰治の凄さに。一方、ヒロイン・小池栄子の『千と千尋の神隠し』湯婆婆のような、声のトーンと独自なセリフ回しに最初は少し違和感があったが、主人公に付き添うのに振り回す妙なキャラと展開が良く、大泉洋がいつもより抑え気味なので、バランスは悪くない。

中盤までは小気味良く、行動と気持ちの行き違いやすれ違いを、因果応報のドタバタ喜劇とした、テイストの軽妙さとのマッチさが良い。タイプが違う美人女優が、各々、愛人を魅力的に描写するのは良いが、十数人いる愛人の設定なのに、3人しか登場しないことは肩透かしに。また、〈未完の原作〉以降のプロットは、まさかの夢オチかと思いきや、終盤のその後は、中盤までのリズムの良さが無い。悪くはないが、何とか纏めた感じに。

時代考証はあるのだが、喜劇に寄せるためか、戦後の時代背景が弱いのが残念で、思考や行動に関連することを、さり気なく加味して欲しかったが、トータル的には邦画喜劇としては及第点に。