ななし

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのななしのレビュー・感想・評価

4.5
「これは流石にスタントマンやろ」と思ったアクションもパンフレットを見ると、すべてトム・クルーズ本人が演じているという恐怖。

あらゆる危険なアクション・シークエンスを稀代のハリウッドスターがその肉体を頼みに自ら披露している事実は、映画に異様なまでの「緊張感」と「説得力」を与える。

最悪死ぬかもと──キャラクターであるイーサン・ハントを飛び越して、トム・クルーズ本体が心配になってくる視聴体験はちょっとほかの映画では味わえない。ここに来て我々は俳優の身体性が虚構の殻を食い破り、剥き出しの状態で眼前に晒されているという実感に、奇妙な幻惑感を覚える。

誰かが言った。「トム・クルーズの映画はトムがトムっぽい役をやっているだけだから観ない」と。その指摘はある意味で正しい。それはスター映画の宿命だ。

しかし、トム・クルーズの映画はトムっぽい役のなかから、たとえばその特徴的な"トム走り"を通して、本人の生身そのものがどろりと表出してくる感覚──そしてそれが映画に歪ですらある形で「説得力」を付与してしまう。なんという力技だと思うが、実はそれこそバスター・キートン以降の「アクション俳優」の伝統ど真ん中だったりする。

ともかく僕はそのどろりとした感覚がたまらなくて、これからもトム・クルーズを追い続けたいと思うのだった。

続篇、楽しみです。
ななし

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