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花と雨のgariのレビュー・感想・評価

花と雨(2019年製作の映画)
4.5
いちファンとしてのSEEDAへの思い入れが点数に反映されてしまっているのは否めないけれど…。

SEEDAの自伝的作品で、BachLogicと出会い『花と雨』が録音されるまでを描く。和製『8 Mile』とは言い過ぎかもしれないけれど、ロンドンからの帰国後日本での生活に馴染めず、HIPHOPを心の拠り所にしながらも、マリファナの売人でのハッスルにのめりこんでゆく。
姉の死を機にある種のプライドが消え、英語を多用したラップから日本語主体の「伝える」ラップに大きな変化を遂げる様は感慨深い。
この変化が2006年のHIPHOPシーンに巨大なインパクトを与える(15年経った今でも頻繁に聴く色褪せない名盤)。

姉の死の真相は深くは語られないけれど、遺書などが見つからなかったのかもしれないし、あえて深くは触れなかったのかもしれない。
いずれにせよ、やるせない日本での生活で常にそばにいて時に叱ってくれる彼女の存在が大きかったことは間違いないし、自身の言葉ではなむけをリリックにしたためた『花と雨』はとてつもなくリアルであるし、語弊を恐れず言うならロマンチック。

SEEDA自身の楽曲も劇中で多く使用されるけれど、マリファナの売買シーンはMVのようであるし、都会の喧騒もその中での孤独感も、全編に渡ってHIPHOPが感じられる作品。

『不定職者』前のSKITまんまのセリフや、『Sai Bai Man』まんまの育成シーン、逮捕前の職質シーンは『Son Gotta See Tomorrow』かなぁ、『Game』はこの勾留について歌っているのかなぁなんて、クスッとしながらの答え合わせも楽しいかもしれない。

余談だけれど、高岡蒼佑演じるBachLogicは、ひょんなことから中学の先輩と知った。全く面識はないけれど、関係を辿って何とか手に入れたサイン入りのCD-R(中身は空)は10年以上経った今も本棚の指定席。
BachLogicの仕事の中でもやっぱり『花と雨』は特別で、綿密に構成されたトラックとSEEDAのリリック、フローは今でも色褪せない。
アルバムの補完的な役割としても、本作品(映画)は自分にとって重要な意味を持つ。
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