スベン

ダンサー そして私たちは踊ったのスベンのレビュー・感想・評価

3.6
ジョージアの国立舞踊団でプロの舞踊家を目指す練習生の主人公。
今作で初めて知ったジョージア舞踊。その根幹には男らしく、力強く。ジョージアという国そのものなんだ、とコーチが説く場面があり、まさにこの作品の主題だと思う。
だからこそ、新入団員に出会った事で主人公は自分のセクシュアリティやジョージア舞踊への齟齬で揺らぎ始める。

同性愛者だったらしいダンサーの受けた罰と辱め、その末路。戒めのように事あるごとに出てくる。ひどすぎる経緯を笑い話のように練習生たちが面白おかしく触れ回るのもあんまりすぎて…
上や周りがそう振る舞うんだから、自分たちも同じようにして当然という浅はかさと差別意識のなさ。
保守的でとても生き辛そうで、しかし、これがLGBTQ対してのジョージアの現実と見せつけられる。

少しでも救いがあったのは、主人公を最終的には理解してくれた人たちの存在。マリはパートナーとして長年の信頼があったからこそだと思う。
そしてどうしようもなかった兄の見せた優しさとらしくない励まし。ダメさを散々見てきたからこそ、あの対応は意外でもあり響いた。

終盤に主人公が感情のままに踊る姿はとても優雅で、美しい。
ジョージア舞踊とは正反対かもしれないけれど、怒りや哀しみ、そして踊ることへの情熱が溢れている。臙脂色の伝統服がまた映える。
きっとこれからの彼の人生は険しい。
それでも日々は続いていく。決心して前を向いた主人公の表情が印象的だった。
スベン

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