Kaleva

ダンサー そして私たちは踊ったのKalevaのレビュー・感想・評価

3.9
ラスト、男権主義のコーチを前に、主人公メラブが自分の思うままに身体を謳わせるシーン。言葉こそ一言も発しはしないものの、荒々しく振るわれた手足は、地団駄を踏んで言葉にならない思いをぶつける幼子のようで、そこには強い本能的欲求に突き動かされる獣のような荒々しささえ感じる。空気のはぜる音。『ザ・トライブ』を彷彿させる。
それだけの野生と同時に、指先まで筋で統制されたしなやかな動き。本来慣性に従うはずの振り回された肢体を、理性の力で制御する。
ダンスの魅力は、この野生と理性との絶え間ないせめぎ合いの中に生まれてくるのだとつくづく感じた。

テーマ自体は、他の方が述べてるようにここ最近の時勢に倣ったもので、物語の運びに特別なオリジナルティがあるわけではないが、飽きることなく観れた。性描写ひとつとっても重ったるさがなく、切なさだけを残してさっぱりと描かれており、鑑賞後のあと味が割と清涼。男と女の方がくどいよね・・・。主人公の性的指向も、男か女か、という固定的なものとしてではなく、状況によって如何様にでもなびくものとして描かれていたのも良かった。
Kaleva

Kaleva