ShotaOkubo

ドリー・ベルを覚えているかい?のShotaOkuboのレビュー・感想・評価

5.0
映画と記憶は無関係ではいられない。たった一本の作品でさえ、見ているはしから見る主体の視線を無効にしながら、かなたへと逃れさってゆくものだから、それについて充分に語れるはずもない。見るはしから忘れてしまい、その全編をそっくり記憶しているようなものは、一人としていないはずなのだから。つまり、映画は見ることにつらなる「記憶」の問題に帰着する。「ドリー・ベルを覚えているかい?」には共産主義という大きな幹があって、そこに接木するかのように断片的な少年の記憶が蘇らせられたかのようにして撮られている。まさに記憶の方法のしたがって記憶の映画を撮っている。だから惹きつけられるわけだ。
ShotaOkubo

ShotaOkubo