人類ほかほか計画

フランケンシュタインの復活の人類ほかほか計画のレビュー・感想・評価

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カーロフがフランケンシュタインの怪物を演じた3本のうちの3本目だけど監督がホエールではなくなっているからか2本目『花嫁』よりもぐんと知名度が落ちる『復活』。
シリーズ中この作品だけ、美術がめっちゃ建物とか斜めにいがんでて表現主義的なんだけど、ティムバートンみたいなファンタジックな感じとも違うし、『カリガリ博士』の絵画的というか漫画的なサイケ感ともちょっと違う、ただただ病的で神経症的なキリキリした感じ。フランケンシュタインってそういうニューロ系のホラーだっけ、って思うけど、なんというかストーリーがあれよあれよと運命論的に悲観主義的に悪い方向に悪い方向に進んでく悪夢的な感じとはまあ合ってる気もする……。

首吊り刑で死ななかった、生きるオカルト男、イゴールという名キャラクターの登場。演じるルゴシがうまい。大仰なドラキュラ演技しかできない大根なんかでは決してないことを証明してる。ルゴシが高身長なので怪物を演じるカーロフがめっちゃ厚底履いてる。
(イゴールってせむし男の名前ってイメージがあるけど、本家ユニバーサルではせむし男はフリッツだったりダニエルだったり。この『復活』と次作『幽霊』に登場するルゴシのイゴールはせむしって感じじゃなく首が曲がってる男。そしてもはや怪物を凌ぐ存在感でフランケンシュタインよりもイゴール二部作と呼びたいくらい。)

フランケンシュタイン博士の遺した怪物を巡って、フランケンシュタインの息子、イゴール、村の警察署長の三者三様の思惑が入り乱れて悪いほう悪いほうに進んでく物語が面白い。

1作目2作目の監督ホエールが同性愛者だったという話が有名だけど、後のハマープロのフランケンシュタインシリーズ含め、何故かホエールの手を離れた作品のほうにBLみが入ってることが多く、当のホエールの2本はマイノリティの孤独のほうにフォーカスしてるのが切ない。この『復活』に関してはカーロフ演じる怪物とルゴシ演じるイゴールの和気藹々(?)とした名コンビ(?)な感じが実に癒される。映画『エドウッド』でもルゴシがカーロフの悪口言ってたりして二人は仲が良くなかったイメージだけど、ルゴシが亡くなる数日前「今日はカーロフが会いにくるから着替えないと」とか言って部屋を歩き回っていたのを妻が目撃したというエピソードもあったりする……。

前二作のフランケンシュタイン博士もなぜか悪行許されエンドだったけど、今回の息子も相当にトチ狂った悪行の末になぜかラストで息子を助けるヒーロー化して、しかもそれって自分で蘇らせた怪物(その結果何人も他人を殺した)に攫われた息子(身内)を助けたっていうだけなのに英雄扱いみたいになって終わるっていう、明らかに外部的というか会社の商業的要請のもと大胆な妥協が行われてる、職人的っていうかまあ映画ってこんなもんだよねって感じの産物ではある。しかし表現主義的な美術等含めて前作に負けないくらい変な映画にしてやるぞみたいな気概が感じられる。お城の中に忍者屋敷ばりに秘密の通路とか覗き穴とかあってそれで色々話が展開してくのもおもろい。怪物の血液とか脈拍とか調べて「人間とは全然違う要素で出来てるスーパー生命体だ!」って新事実発覚のくだりとかも続編かくあるべし感。

ラストの突然のスピーディーな大アクションはテレンスフィシャーもびっくりって感じだし、それで滅ぼされる怪物の滅びっぷりも、後の007シリーズなど(そしてもちろん『ターミネーター2』)に受け継がれるような「悪役や怪物の最期ってのはインパクトなくちゃ」的な気概がある。