ストーリーがほぼないぶん、中島哲也の人間の見つめ方が後の作品よりくっきりエグめに表れている。90年代という時代の色もあるんだろうけど、ずっと諦めてる。諦めてるけど、ちょっと未来に期待したりもしてる自分、なんか映画の主人公みたいでおもろいな、みたいなそういう自意識コーティング自意識みたいなのが充満してる。面白いし笑えるけど腹にクッと来る重さ。
日常を観察する素振りを見せつつも画面はみっちり人工的でデザインされまくってて、一言一言本音じみたことを言ってみるけど、誰にも本音だとは捉えられたくない。人生限界だけど、余裕だと思われたいし、そう思い続けてたらなんかほんとに余裕な気がしてきた、みたいな情感にすごく共感する。フィクションを摂取しすぎると人間はこうなるのか
とにかく美術が本当にすごいし、照明も日本映画とは思えない凝り方をしてる。これの前作もこのトーンらしいけど、ここから一体なんで急に『下妻物語』になったのかすごく気になる。『嫌われ松子の一生』のメイキングで「若い子とかにも観てほしいから」と言っていたけど絶対それだけじゃない気がする。