千年女優

悪なき殺人の千年女優のレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
3.5
フランス山間の人里離れた村で発生した富豪の妻エヴリーヌの殺人事件。真冬の夜に殺害された彼女の事件解明にあたって、第一被疑者となった村の無口な農夫ジョゼフ、その愛人アリスとその夫ミシェル、パリに住むエヴリーヌの同性愛相手のマリオン、コーチジボワールに住む青年アルマンが複雑に絡み合う様を描いたサスペンス映画です。

ドイツとフランスのハーフでデビュー作『ハリー、見知らぬ友人』でセザール賞監督賞を獲得以来フランスで俳優や脚本としても活動するドミニク・モルがコラン・ニエルの小説『動物だけが知る』を映画化した2019年公開作品で、緻密な物語が評価されて批評家から称賛を集めると日本では東京国際映画祭上映を皮切りに劇場公開されました。

黒澤明が『羅生門』で世界に広めたある出来事を多視点で描く「藪の中」サスペンスもので、インターネット時代そして複数のルーツを持つ監督らしく国境を跨いで物語を展開します。その本作たる特徴には些か強引さを感じるところもありますが、わずかな行き違いが当人には想像及ばぬところへ拡散する入り組んだ現代社会に迫る一作です。
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