MasaichiYaguchi

どうしようもない僕のちっぽけな世界は、のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
劇団オーストラ・マコンドーを主宰する演出家・倉本朋幸さんが長編映画監督デビューを果たした本作は、我が子に対する虐待を疑われ、養護施設に娘を保護されている男とその妻を軸に、今の社会が抱えている問題を浮き彫りにしていく。
男は実家から借金しながら自堕落な日々を過ごし、妻は母親としての責任を放棄して身勝手な生活を続けている毒親たちだ。
2人は社会への反抗心を抱きつつ、そんな自分自身も嫌悪する毎日を送っていたが、或る日、児童相談所からの提案で、養護施設から条件付きで娘を引き取れることになる。
再び娘と暮らしはじめた男は次第に父親としての責任を自覚していくが、その一方で、いつか自分が虐待行為をしてしまうのではないかという恐怖心に苛まれるようになってしまう。
そして男の置かれている状況は閉塞感溢れるものになっていき、飽和点に近付いていく。
八方塞がりの中、男は娘との生活をやっていけるのか、果たして悲惨な結末を迎えてしまうのか?
全国で高止まり状態が続く新型コロナウイルス感染者、その影響が様々に出てきて社会に明るい見通しがつかないこの頃、本作に描かれたような夫婦や、シングルファーザー、シングルマザーが数多くいそうな気がする。
気が滅入る内容ではあるが、本作は最後に“パンドラの箱“に最後に残ったものを我々に見せてくれる。