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ラ・ジュテのjyoのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
5.0
『レヴェル5』や黒澤明の『乱』のドキュメンタリー等で知られるクリス・マルケル監督が、全編ほぼ静止画で構成し、タイムスリップで知り合った女性との恋愛と戦争の恐怖を描いたSFドラマ。テリー・ギリアムの『12モンキーズ』は、本作が元ネタとなっている。

主人公は、少年時代ある男性が倒れているのを強烈に記憶している。それから数年たったある日、成人した男性は、タイムスリップの実験台となる・・・。

SF映画ではあるのだが、アンドレイ・タルコフスキーの『ストーカー』やジャン・リュック・ゴダールの『アルファヴィル』のように派手な特撮は一切無く、写真と登場人物のナレーションだけで行われる。モノクロームで綴られたその映像(写真)は、どこが超現実的で退廃的などこかしらのグロテスクさも映像からは読み取れる。それでいて、女性と出会うと美しくなり、主人公の心も表現している。

この映画、ほんの一瞬だけ動いている映像がある。そのシーンはまるで主人公の性欲を表しているかのようでもあり、観ている我々のほんの少しの癒しを与えているかのようでもある。

わずか28分の短編映画。しかし、その映画から得られるものは非常に大きいはずだ。
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