MasaichiYaguchi

約束の宇宙(そら)のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)
3.5
欧州宇宙機関(ESA)が全面協力して、ドイツ、ロシア、カザフスタンの宇宙関連施設で撮影しているので、エバ・グリーン演じるシングルマザーの宇宙飛行士サラの訓練シーンが本格的で、更に宇宙飛行士として職務に対する情熱と母として一人娘に対する愛との間で揺れ動く姿がエモーショナルに描かれていて心の琴線に触れる。
主演のエバ・グリーンというと悪女役のイメージが強いが、本作では一人娘への愛情溢れる母を演じていて印象的だ。
本作のエンドロールでも紹介されているが、日本にも山崎直子さんや向井千秋さんという女性飛行士がいる。
本作では、サラが子どもを置いて宇宙へ行くことに対して非難めいたことを言われたり、クルーとして男性よりも女性は劣っているのではという性差別されるシーンも登場するが、共稼ぎ世帯が増え、家事育児の分担が普通になっているこの頃でも、未だに男尊女卑や「男らしさ、女らしさ」に凝り固まった人々がいる。
この作品を観ていると、クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」を思い出す。
作品の規模の違いや哲学的な要素の有無があるが、「インターステラー」でも時空を越えた父娘愛が時にエモーショナルに繰り広げられている。
「父の恩は山よりも高く、母の恩は海よりも深し」という言葉があるように、子どもに対する愛情に父母の違いはなく共に広大で深い。
ただ本作のサラにしろ「インターステラー」のクーパーにしろ、宇宙飛行士として地球を離れている間、残された子どもを経済的にも精神的にも支え、ケアするのは周り人々だ。
だからこそ本作の「あなたがいるから、頑張れる。」という親子の絆を感じさせるキャッチコピーに繋がっていくのだと思う。