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約束の宇宙(そら)のTenKasSのレビュー・感想・評価

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)
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とりあえず宇宙飛行士の訓練が沢山見られたから大満足。しかもロシアだからってやたらと水辺でタルコフスキーな画面を撮りまくる。その安直さも好きだし、それを愛でて終わりにしたい。

何となく、テーマの為にチグハグになっている部分が多いように感じたが、考えてみると、それは全部意図的なものだったのだと思う。
恐らくトキシックな男性像、男性社会像、その中で犠牲になる女性、母親。という文脈でこれを観ると、凄く変な感じがするというか過剰に主人公がエゴイスティックに見えてしまう。序盤こそそういった子育てに非協力的な父親像、セクハラを無意識にかましてくるチームの様子が描かれているが、後半では父親は立派に父親をやっているし、チームは彼女が母親であることにはある程度寛容であるように見える。
だから恐らく紋切り型なテーマ性ではなくそこに逆説的な、母親であることに対して強迫的にならざるを得ない何にでもしっかりと責任を果たすことを求められることの解体にかかった映画だと見たほうが良い気がする。その意味でのマット・ディロンの「完璧でなくていい」云々という台詞があるのなら何となく腑に落ちるし、ラストの著しい逸脱も完璧であることをやめることだと捉えるのならアリなのではないかと思った。

しかし最後のポップソング使いと歴代女性宇宙飛行士紹介はちょっと冷めたなぁ…
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