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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームの新品畳のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

アクション相変わらずすごいし、過去シリーズとの連動・決着の興奮もあるし記念碑的な作品として楽しめた。
ちゃんとキャストみんな揃っててすごいね。エンディングだけでトム・ハーディー出す贅沢さ。

ただ脚本でそれどうなの?という点はいくつかあって、特に人々からピーターの記憶を消す魔術がなんか妙にガバガバ設定でクライマックスで「そうするしかない」みたいに言われてもあまり納得できなくてモヤモヤした。「勢いで押し通す感じね、OK」と自分に言い聞かせておく。

今シリーズのスパイダーマンのどこが好きって今までのスパイダーマンとは違うポジティブさと軽快さがあったからなんだけど、第一シリーズ、第二シリーズの決着を担う形になったこともあってなんだかんだ「孤独に闘うヒーロー」になってしまった。系譜を受け継いだと取ることも出来るし、それはそれでアリなんだろうと思う。

だけど、だけどさ、
もう新世代らしい展望への展開を迎えてもいいんじゃないかなぁという気持ちにはなった。トムホが演じるピーターの良さって周りに素直に頼るところだと個人的に感じてたし、失敗しながらも先人たちのサポートを受けながら新しいヒーロー像を見つけていく気がして楽しみにしながら見ていたんだよね。

キャプテン・マーベルがカウボーイ的な決闘をいなしたように、新しい価値観を提示するいいチャンスだった様に思ったから今回の流れは正直物足りなさを否めなかった。もちろん、憎しみという負の連鎖を断ち切るテーマを克服はした作品ではあったけど、それ自体がヒーローが孤独にならざるを得ないことへの必然性を語るものにはならないと感じた。
少年が大人になる成長を描いただけなのかもしれないけれど、それはそれで最早どんな映画でも語られてることだし。

次回作は果たしてあるのだろうか。あるだろうな。

追記:
トニー・スタークが残したテクノロジーとそれが引き起こした負の遺産から距離を置くことが出来る様になったことはピーターにとっては幸運でもあるのだろうな。

トニーのカルマでもあり彼自身が精算しえなかった「大いなる力に伴う、大いなる責任」をまだ少年であるピーターは託されていたわけだけど、やはり新世代である若者にそういうものを期待と共に押し付けるのは個人的に気に入らなかったし、ピーター自身の新しい可能性を狭めているように思えて嫌だった。

マルチユニバースという作品内では並行世界モノであってもメタ的には"過去"作に他ならないわけで、その2シリーズのツケをMCU版のピーターが払わなければならなかったのはまるで現実世界で老人たちの残した問題の負債を次世代の若者たち背負わされている理不尽な構造を連想させる側面もあるように思えて、少し複雑な気持ちになった。

誇りやカッコよさって本当に危ういし、それを本当に美化してるものって意外と「与える側」だったりもするんだよな。例えば息子に無理やり家業継がせる父親みたいに。

今回ピーターはトニーのスーツを脱ぐこと、新しく自分で編んだ衣装を身に纏うことで自立の一歩を踏み出した様に見えるのだけど、その実はスパイダーマンという伝統に縛られたまま孤独を強いられた一人の若者が再生産された…という厳しい見方もできるのではないか。

その呪縛から解き放たれた新しいヒーロー像としてのスパイダーマンを拝める日か来ることを強く望んでいるし、次回作以降の楽しみにしたい。
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