カズミ

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのカズミのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

初めてスパイダーマンに触れたのは、確か小学生の頃だったか。それから歴代作品はすべて追ってきた。
長い間、ヒーローに苦手意識があり、ずっとヴィラン派だった。それはひとえに海外の悪に対する制裁の概念と反りが合わなかったからに他ならない。

一代目のシリーズを見ながら「まただ! また死んだ!! もうやめてよ、殺さないで。誰か助けてあげて!!」と叫んでいたことをいまだに覚えている。
特に過去作はいつも、ヴィランが悪に落ちるまでの経緯が丁寧に描かれている。元々悪質な人間が突然立ちはだかるわけじゃない。彼らは優しさを持ちながら、気弱な人間であったり、事故にあったりと、その境遇が不憫で、一度悪に染まったからと簡単に死を迎えるのが理不尽に思えたのだ。
だから受け入れられるヒーローは長年、敵を殺さないと誓うバットマンだけだった。

それがここ数年、友人の勧めでマーベルシリーズを追い、展開が進むほどにのめり込んでいった。食わず嫌いをしていた自分を恥じて反省した。
アベンジャーズシリーズのスパイダーマンは、とにかく世界観の規模がでかく、フェーズ4に入ってマルチバースの設定が色濃くなってからというもの、物語が本当に何でもありになってきた。だからこそ、今回の歴代ヒーロー揃い踏み、というとんでも展開が成り立つわけだが、それでも話が破綻しないのがすごい。

元の世界に戻れば死を免れないヴィランズに感情移入し、なんとか助かる道を模索するピーターの姿は、長年引きずってきたヒーローに対する不信感を拭い去り、十数年を経て公式から素敵な答えをもらった気分にしてくれた。
これは観客が求めるヒーロー像や製作陣の描きたいヒーロー像が時を経て変わってきた、ということではないだろうか。だとすれば今後もっと素晴らしい映画がたくさん現れるのではないか、と期待できる。

とはいえ、何らかの形で報われたかのような描写のある歴代ピーターたちの重荷を一手に引き受けるように、新ピーターの辿る道は相変わらず険しい。
メイおばさん……最初は助かったと思ったのに……あの上げといて叩き落とす手法はやめていただきたい……心がズッタズタになったよ。
犠牲者を前に、ヒーローの存在意義との狭間で苦悩する様は、確実にトニー・スタークから引き継がれている印象。
アベンジャーズ版のピーターは、歴代と比べて一番少年っぽく、いかにも高校生! と言ったポップな感じで、正直アイアンマンの後継者、と評されているのが今までピンと来なかった。しかし、今回の映画を通して「やっぱり彼だった!」と納得させられた。

余談だが、歴代のスパイダーマンシリーズではアメイジングスパイダーマン推しだった私としては、今回意図せず3作品目が見れたようでテンション爆上がりだった。
好きな理由としては、一番現実味があるというか、スクールカースト下層にいる高校生が突如力を得て、復讐心を糧に自警団を買って出る様子がリアルに映し出されている気がしたからなのだが、確かに他と並ぶと地味めになるよね、と自虐のシーンで爆笑してしまった。
でも貴方は全然しょぼくないよ。アメージングだ。

ストレンジ先生があれだけ習得に苦心した魔法をネッドがあっさり使えてしまったのも大変面白かったが、ゲートの先から出てきたのが歴代ピーター、という演出にはわかりやすく感動を覚えた。
友人も少なく、ほとんど一人で多くを背負ってきた歴代ピーターたちが、頼れる友人も仲間もいる新ピーターからチーム戦の方法を学ぶのも、なんだか胸にくるものがある。三人揃って並んだときに、決めポーズの形をとるのも熱い。

歴代の刷り込みからか、スパイダーマンの敵=グリーンゴブリン、という印象が強かったのだが、今作で新スパイダーマンと彼との対決が見れたのも個人的には嬉しかった。

本作ではサブとして登場したストレンジ先生がマーベル作品の中では1、2を争うほど大好きなので、公開中のマルチバースオブマッドネスと合わせて観るのがまた楽しみです。
カズミ

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