サンフランシスコから河をさかのぼって開拓地に連れて来られた一頭の雌牛。あの小舟に乗せられた雌牛の堂々とした姿と、その到着を静かに見守るインディアンの子どもたちのショットが繋がれる。彼女たちは生まれてはじめて牛を見たのだろう。この一連のシークエンスの美しさに深く沁み入った。
全編をつうじて画面の暗さが印象に深い。この暗さはあきらかにハリウッド映画へのアンチテーゼでありながら、主題に照応する作家の選択である。西部劇における男たちの絆と友情という百年来の主題表現を刷新しようと試みたライカートの意欲作。ジョン・フォードがこの映画を観たら何というだろうか。