りょう

ジャンゴ 繋がれざる者のりょうのレビュー・感想・評価

ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)
4.4
 いわゆる西部劇があまり好きではありませんが、クエンティン・タランティーノ監督の作品なので、当時も劇場で観ました。彼の作品で普通の西部劇なはずもなく、HIPHOPをバックにした銃撃戦とか、現代の黒人カルチャーがうまく融合されています。
 前作の「イングロリアス・バスターズ」の毒々しい悪役が強烈だったクリストフ・ヴァルツに期待しましたが、あまりクセのない賞金稼ぎで物足りなかったです。西部劇となれば、次作の「ヘイトフル・エイト」がオールスターキャストで、しかもミステリーとミックスされた脚本が秀逸なので、この2作に挟まれているからか、他の作品と比較して印象が薄くなっていました。
 それでも、レオナルド・ディカプリオの悪役ぶりが心地よく、ダイニングテーブルでブチ切れたときに、怪我をしてもそのまま演技を続行したシーンは圧巻です。誰も撮影をとめなかったのが不思議なくらい流血しています。
 この当時のピストルとかライフルの威力はわかりませんが、銃声とか血糊のボリュームが規格外です。こういうシーンは純粋にエンタメとして観られますが、当時のアメリカの奴隷って、こんな境遇だったのでしょうか。南北戦争の2年前という設定ですが、それを再現しようと差別用語は連発されるし、直接的な迫害の表現がえげつないです。しかも“奴隷デスマッチ”なんてものが実在したとすれば…。
 ちょっと観るに堪えないという属性のひとたちもいたはずですが、元奴隷であるジャンゴの殺戮行為が説得力を得るためには、このくらいは必要な表現だったのでしょう。
 ちなみに、黒人でありながら強烈な差別主義者であるスティーヴンのキャラは、女性差別などをくり返す某政権与党の女性議員の精神構造と共通するのかもしれません。
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