クマヒロ

リチャード・ジュエルのクマヒロのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
4.4
『情報社会に投じる一本』

メディアの波及力、情報発信に際して、一人一人の責任の重さ。
イーストウッド監督が一人一人に情報発信力がある今こそ伝えたい作品なのだとひしひしと感じる。

『インビクタス/負けざるものたち』ではラグビーワールドカップを、メディアを通して見せることで波及していった、良い波が今作では末恐ろしいものに見えてくる。

どハマり役のポール・ウォルター・ハウザーには心底驚かされ、彼しかできない演技を見せてくれた。
キャシー・ベイツ、サム・ロックウェルら脇を固める名優の演技もリチャードを優しく守っていて、ベストな布陣。

リチャードが初めてFBIに意見を伝えるシーン、去り際のリチャードの背中に映るFBIの文字でまさにヒーローが逆転する。
彼のようなヒーローが今後も現れるように、イーストウッド監督なりの演出なのだろう。

『よこがお』や本作が現代に作られるということは情報を受け取る側のリテラシーが必要な時代なのだと痛感させられる。

FBI捜査官複数名をジョン・ハム演じる一人の捜査官がやったことにしていたり、オリヴィア・ワイルド演じる記者が色仕掛けでスクープを手にしたり、それらは事実ではないらしい。
このメタ的な構造。
クリント・イーストウッド監督作品という全世界に伝わるものをもって、情報発信の不確かさと情報リテラシーを大事にしなければならないことを体現しているのかもしれない。
クマヒロ

クマヒロ