美大生A

雨月物語の美大生Aのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
3.8
妖艶な雰囲気が魅力の怪談。
江戸時代の小説『雨月物語』原作。

ひと息、と思うと、災難が立て続けに起こる。若狭姫が現れてからの展開に引き込まれた。
モノクロながら、映像から充分伝わる美しさと妖艶な雰囲気が魅力。
陶芸家だけに焦点を当てるのではなく、もう1人の男が侍になって出世し、出世と引き換えに妻が遊女になって身を売ってしまっているというのが同時に描かれていてよかった。

結局若狭姫も戦争によって幸せを得られなかった人物として描かれており、争いによって生まれるものは悲劇でしかないことを映画全体を通して端的に表現している。

おはなし↓(めちゃくちゃネタバレ)
とある貧しい陶芸家
戦争の世で、村に襲いかかる兵士たちから愛する妻子を連れて逃げる。
出稼ぎに出た先で、美しい若狭姫と出会う(京マチ子)
若狭姫は彼の陶芸の技術をかっている。
こんなに美しい陶芸は見たことがない。そう褒めちぎる若狭姫。
何かに取り憑かれたように、陶芸家はたちまち妻子のことなど忘れて若狭姫と契りを交わし、そして長い時間をともにすることとなる。
ある時、街を歩いていた陶芸家に「死線がみえる」と話す老人。
今が夢のような時間なんだと主張し、若狭姫の屋敷に戻る陶芸家。
「もうあなたを離したくありません、あなたは私のもの、もう外へでてはなりません」と言う若狭姫。
しかし若狭姫が陶芸家の身体に触れると、何かに拒まれる。
街で会った老人に頼んで、陶芸家は自身の身体に魔除けを描かせていた。(耳なし芳一的なかんじ)

若狭姫は織田信長に滅ぼされ、幸せを手にすることのできなかった哀しい怨霊だったのだ。
命からがら逃げ切り、妻子のもとへ帰ってきた陶芸家。
やさしい妻と、かわいい子供を観て自身の本来あるべき姿を思い出す。
一夜が明けると、妻が落武者に刺されこの世にはもういないことを告げられる陶芸家。昨日いたはずの妻は幻だったのだ。
月日が経ち、ひたむきに陶芸と向き合う陶芸家。ここで映画は終わる。
美大生A

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