わせ

雨月物語のわせのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.5
溝口健二監督の作品の中でも特に期待していた 雨月物語。観るタイミングが中々掴めなかったのだけれど、先日、今作の衣装デザインを担当した、しかもその部門でアカデミー賞を受賞した 甲斐庄楠音の展示を見に行き、雨月物語のポスターや衣装を生で見れたので、興奮が冷めやらぬうちに鑑賞することに。本当に凄い。何もかもが完璧、演出も音楽も内容も。暴力に溢れた戦乱の時代。男は欲に溺れ、女は健気に主人を待つ。どの場面も目を見張るほどの美しさ。溝口健二お得意の、湖の描写も最高。日本画みたい。京マチ子の存在感もとんでもない。屋敷に呼ばれたあとのシーンは、源十郎をもてなす所も含め、まるで竜宮城にいるお姫様のようだった。ベースとなるのは現実的な時代背景、状況だけれど、そこに幻想的で夢のような、非現実的な描写がエッセンスとなり唯一無二の世界観を創りだしている。最後、宮木が居なくなったはずなのに声が聞こえるところ、源十郎をあたたかい思いで見守っているのが本当に健気で、切なくて、涙が出てくる。戦が望みを歪ませてしまった、哀れな男と女の物語。
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