スキピオ

雨月物語のスキピオのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.0
"いくら言ってもお前さん馬鹿だから、自分で不幸せな目にあわなかったら気がつかなかったんだよ"

溝口健二監督による、ヴェネティア国際映画祭銀獅子賞受賞作品。

身の丈に合った生活を望む女と、欲にかられ家を離れる男、二組の夫婦の物語。

戦国を舞台にした奇譚作品「雨月物語」の映像化、要は「ちょっと怖めの昔話」なので「ああ、この感じ子供の頃見たなぁ」と日本人にとっては見やすい。60年以上前の作品だけど、現代の目線で見ると、現実世界からじわじわと異世界に引き込まれる奇譚というジャンルと「白黒」の情報を限定された画面が合わさることによって、そこはかとない不穏さを増幅させているように思えてグイグイと引き込まれた。

やや緩慢なところはあったし、後から考えるとサラッとしすぎているところもあってこんなもんかと思ってたけど、最後まで観て、ガツンときた。こういう言い方は良くないけど海の向こうで評価された所以はこういうことかと。

ここに描かれた男と女の関係、本当の幸せのありかについては今も通じるところが多分にあり、どっぷり余韻につかっていられる。傑作。女性の群像劇でもあるので女性の方にもぜひ観ていただきたい。