SatoshiFujiwara

戦争のさなかでのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

戦争のさなかで(2019年製作の映画)
3.6
TIFF2019

スペイン現代史については通り一遍の知識しか持ち合わせていないが(昔レネの『戦争は終わった』を観てスペイン独裁とフランコ将軍についていくらか意識的になりましたね)、恐らくは史実に極めて忠実なドラマで見応え充分。ウナムーノに対して新たな視点を抱かせる、とかその思想的側面を掘り下げる、というもんじゃないが、自宅軟禁を余儀なくされたウナムーノのサラマンカ大学でのスピーチをドラマの頂点とし、そこに至るフランコの独裁政権の所業と情勢、そしてウナムーノの内的苦悩を描く。

ドラマ的脚色としては若かりし日に出会った恋人=その後の伴侶(先に亡くなる)や母性愛への渇望、母体回帰的欲望や孤児的な孤独感(その点で仲の良い孫との心理的な一体感も絡める)と現世での知識人としての矜持を裏表のものとして描く辺りがキモか(とは言え夢の中での理想化されたシーンであろう、若き日のウナムーノと恋人が仲睦まじそうに木陰に横たわっているシーンはベタで個人的にはちょっとね…)。史実と知識人の内的苦悩と行動性、の面においてマルガレーテ・フォン・トロッタの『ハンナ・アーレント』に印象は近い(『ハンナ〜』の方が娯楽色は強い)。

アメナーバルは初見だが、これを観る限り実に手堅い演出力(それは良いとして画面の妙な白っぽさは映写の問題?)。一般公開の折にはスペイン現代史をざっとおさらいしてご覧ください。重厚に愉しめます。
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