このレビューはネタバレを含みます
旧優生保護法の実態をドキュメントしようとする劇映画。
タイムスリップしてしまった妊婦が、元の時代に戻れなくなってしまうことを、旧優生保護法下の悲惨への逃れ難さと重ねてしまうのは危うい。なぜならタイムスリップの要因は人智を超えたものであるかもしれないが、旧優生保護法下で行われた惨状は、障害者差別に基づく誤った医学で人間が法をつくり、施行した人為的なものであるからだ。だからその人為さを、ファンタジーに回収してしまうのは、実態を知るには有効かもしれないが、法を変える訴求力を失わせると思う。
このようにファンタジーは、現実の因果を超えて物語を展開させるが、それが法といった人為的なものを不可侵のものにしたり、妊婦を悲惨な存在へと客体化させ物語として消費するのであれば、それはよくないと思う。